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(6)津久井あれこれ《2》豆腐と「水源文化」(2003年2月1日発行の「デジタル零通信」に掲載)
 津久井町は「水源文化都市」なんだそうだが、「文化」というくらいだから、ダムの数を自慢するだけではないだろう。むしろ「水源」といえば豊富な水、その水が良ければおいしいのは酒と豆腐、と連想を広げてゆくほうが「水源文化」にふさわしい。  

そんな良い水と、酒と豆腐をうまく利用して商売に成功した例がある。


■奥多摩の酒と豆腐

 この数年のあいだに、酒好きの友人たちとなんどか奥多摩の小澤酒造に通った。「澤乃井」の醸造元である。なぜ好んで通ったかといえば、当然のことながら酒と、そして豆腐がおいしいからである。多摩川の上流にあたる清流に面して、小澤酒造が経営する売店やレストラン、料亭などがあって、そこで豆腐料理が食べられる。酒造りに使うのと同じ「名水(涌き水)」で造ったという自慢の豆腐である。そのうたい文句のせいもあってか、なんともおいしく感じられるのである。もちろんお酒は蔵出しの「澤乃井」で、これがほとんど原価で飲める。

 ところで、多摩川の上流、奥多摩の水といえば東京都の水源地として知られ、これに関しては、われらが咢堂尾崎行雄と深い関係がある。明治の後期、東京市長時代の咢堂が水源地森林経営を手がけ、「給水百年の計」として高く評価されているのである。このあたりは大塚喜一先生の『咢堂尾崎行雄ものがたり』(つくい書房、二〇〇二年刊)に詳しく書かれている。

 とにかく小澤酒造はなかなかの商売上手で、その成功の秘訣は、なんといっても水の良さを酒と豆腐に結びつけたことだろう。


■なぜか考古調査で「発見」

 ところで、津久井では酒と豆腐を一緒に造っているところはないものの、豆腐屋さんは何軒か残っている。残っていると書くこと自体残念なのだが、ずいぶんと少なくなってしまったようだ。

 その何軒かの豆腐屋さんを「発見」したのは、なぜか津久井の町史編集のための考古の分布調査がきっかけだった。分布調査というのは、津久井町中の畑のまわりを歩いて、縄文などの土器片を拾い、遺跡の分布状態を調べるための予備的な調査である。考古学の専門の先生がたの指導をうけながら、私自身も町史編集委員ということで、ほぼ三年半かけて、町中を歩きまわった。

 そんななか、例えば一昨年の夏の暑い日、青野原の龍泉寺あたりを調査した帰り、その入口にある豆腐屋さんで買い込んで、調査の関係者たちと一緒に食べた冷奴はおいしかった。あれ以来、私はかってに「龍泉寺豆腐」と呼ばせていただいている。

 それから去年の春、青根の音久和(オンガー)地区の調査が終わったあと、「ばば(折花姫のうば?)宮」の向かいにあるお店で豆腐を造っているのを「発見」した。東京まで持ってかえって食べたこの豆腐も良かった。ここは週末しか造っていないということで、ご存知ないかたも多いようだ。

 この二軒の豆腐屋さんとの出会いは、町史の考古調査の副産物みたいなもので、この調査に参加していなければ、「発見」が遅れていただろう。


■津久井の豆腐の食べ比べ

 関にある西川豆腐や青根の天野豆腐の評判は、知ってはいたけれど、なかなか口にする機会がなかった。一度、津久井の豆腐を全部食べ比べてみたいと思っていたら、去年の暮、地元の友人たちのはからいで、この四軒の豆腐を一緒に食べることができた。

 関の西川豆腐、青野原の「龍泉寺豆腐」(ほんとうは尾崎豆腐とか「丹沢豆腐」というらしい)、青根の天野豆腐、そして音久和豆腐(佐藤商店の豆腐)である。

 豆腐の硬さはいろいろだったが、四軒とも木綿と絹ごしの中間くらいで、それを冷奴と湯豆腐でいただいた。それぞれが、微妙に味が違っていて、冷奴向きとか湯豆腐向きとかの区別もできそうだったし、例えば、揚出し用とかケンチン汁用とか、豆腐の料理法によっての向き不向きもありそうだった。

 食べ比べてはみたものの、やはり各人の好みの差もあって、とても点数はつけられなかったが、それぞれに個性があって、どれもなかなかの評判だった。

 そんななかで、その味の違いは、何によるものか考えた。水か、原料の大豆か、製法によるものか。

 ちなみに使っている水は、それぞれ地域の簡易水道だそうなので、たぶん近場の沢の水を引き入れたものだろう。味の違いが、使っている水のもとになる沢の違いだとすれば、なんとも楽しい話だし、さすがは「水源文化都市!」ということにもなりそうである。


■大原屋で味わう「水源文化」

 私自身は、中野の上町で生まれ育ったので、豆腐といえば「成瀬豆腐」だった(いつ、なくなってしまったんだろう)。その後東京に住むようになってからも、豆腐はよく食べたが、買ってくるのはスーパーかデパートの食品売場だったので、誰が作ったとか、どこの水で作ったとか、考えることもなかった。この点はなんとも津久井に住むかたがうらやましい。

 そんなわけで、せめて津久井に来たときに、奥多摩の小澤酒造みたいな場所があればと思っていたが、やはり無理のようだ。道志川の川べりにでも、あんなのがあれば良いんだけれど……。

 と、なかばあきらめていたら、中野の大原屋では、そのときどき、上記四種のうちのどれかの「地豆腐」が食べられることがわかった。ついでに「巌の泉」も飲めて、地粉のうどんも食べられるという。前を道志川が流れていないのが残念だが、少なくとも「水源文化」を味わうことだけはできそうである。

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